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 ○月△日(Fri)

 あぁ、もうどうしよ〜〜っ?!

 まだ胸がドキドキしてる。

 まさか、ナガセさんと廊下ですれ違うなんて!

 ……ナガセさんの周りには、いっぱい人がいたから、私なんて、全然、全く、これっぽっちも見えてなかったと思うけど。
 でもでもっ、もし私に気づいてたらどうしよう!

 話しかけてもらっても、きっと私、しどろもどろで話せないだろうし……。
 ……って、私何考えてるんだろう! ナガセさんとお話する、なんて、
 考えただけでも、顔が真っ赤になっちゃうよぅ〜!!
 あんなに近くでナガセさんを見たの、初めてで、嬉しくて、頭がグワングワンして、いっぱい汗が出てきちゃった×××
 また、近くで見たいなぁ……。

 …………なぁ〜んて♪

 でも、次にすれ違ったときは……ドキドキしすぎて倒れちゃいそうだなぁ。
 心配のしすぎ??



 
○月×日(Mon)

 だい、だい、大ニュース!!

 ナガセさんの“ナガセ”って、“永瀬”って書くんだって!
 思ってたのと違って、ビックリしたよぉ〜!
 なんとなく、“長瀬”さんかなぁって思ってた。

 ホントは苗字じゃなくって、下の名前を知りたかったんだけどね♪♪
 永瀬さんとは、小論文の講義だけ、おんなじ時間なんだ♪
 だから、センセイが持ってる学生名簿をコッソリ見ちゃったの!
 だって、永瀬さんの名前がわかる方法、それしか思いつかなかったんだモン!!
 もちろん、ちゃーんと下の名前も確認しちゃいました☆


 “健児”さん。

 “永瀬健児”さん。

 口に出すだけで、胸がきゅ〜ってなっちゃう……。
 それにしても、気になる人の名前もわからないなんて……私ってダメだなあ××
 でもでもっ、彼の知らないトコロ、これからちゃ〜んと知っていくから、大丈夫だよ!










 ○月◎日(Sat)

 今日は講義のない日だったんだケド……。

 永瀬さんのテニスサークルの練習日だったから、こっそり大学に行ってみた。

 テニスコートの周りは、他の女のコ達がいっぱいで、近くにいけるようなフンイキじゃ、全然なかったよ〜××
 だ・か・ら、講堂2階から、眺めてみましたぁ〜!
 コートの隣に建ってるから、廊下の窓からバッチリ見渡せちゃうんだ! えへへ☆彡

 みんな気づいちゃいそうなものだけど、今のトコロ、私しか知らない場所――……

 きっと、近くで永瀬さんを見たいんだろうなぁ〜。
 そりゃあ、私だって近くで永瀬さんを……。

 ……ううん。絶対ムリだよぉ……。私にはまだ、そんな勇気なんかない。

 だって、すれ違っただけで、倒れそうなくらいドキドキしちゃうんだもん!
 でもでもっ、今の私は永瀬さんを見れるだけでシアワセなんだからっ!
 ……この場所だと、表情までみれないのがザンネンだなぁ……。

 今日の永瀬さんのスマッシュ、スッゴク、スッゴクカッコよかった!!!!!
 相手の足元に、ボールが“バシュッ”って!

 だけど……。

 永瀬さんが一番カッコいいのは、スマッシュを決めた後。
 左手をこう、グッと、小さくガッツポーズするんだ。

 いつも冷静な永瀬さんが、ちょっとだけアツいトコを見せる瞬間――
 そんな永瀬さんを……もっと見たいな。










 ○月★日(Wed)

 朝、電車のなかで永瀬さんを見かけた。

 私は、連結部の辺りに立ってたんだけど、永瀬さんは入り口の辺りで、ドアに背を向けてた。

 ここだけの話…………1回だけ、目が合いそうになっちゃったよぉ〜〜!!
 うぅ〜……まだ心臓がバックンバックンいってる〜。

 車内はぎゅうぎゅう詰めで、人がいっぱいいたから、単なる私のカンチガイなのかもしれないけど……。
 あの瞳で見つめられたら、って考えると……ダメ。 また胸がきゅ〜ってなっちゃう!


 『千鶴。どうして僕から目をそらすんだい?』

 そう言って、永瀬さんは私にむかってうっすらと笑みを浮かべて……。


 『だ……だって……、は……恥ずかしいから……』

 『僕は千鶴のそういう顔を見るの、大好きなんだけど』

 『そんなこと……言わないでください……』


 私はとってもドキドキしちゃって、やっぱり永瀬さんの顔をまっすぐ見れないの。


 
『千鶴。こっち向いてくれないと……キスしちゃうよ?』

 
『う……け……健児さんのいじわる……』

 『いじわるなのは……千鶴の前だけ……だよ』


 永瀬さんはささやくみたいに私に言って、ゆっくりと顔を近づけてくる。
 私も、そっと瞳を閉じて――……


 ……なぁ〜んてっ!!

 思わず、見つめられるときのことソーゾーしちゃった〜!!
 永瀬さんと、キキキ…キ……ッ!
 ダメ〜ッ! もう“胸がきゅ〜っ”どころじゃないよぉ!!


 でも……水曜は、この時間の電車に乗ってるってことがわかって嬉しいな♪
 覚えておこうっと♪♪










 ○月□日(Fri)

 今日はなんだか少しユウウツ××

 お昼休憩の時間に、教室棟の廊下を歩いていたら、廊下のむこう、一番端にある講義室から、永瀬さんが出てきた。
 そのまま、その講義室のったから、食堂にでも行くのかなーって思ってたたんだけど……。
 永瀬さんが向かったのは、食堂とは間逆の方向!

 永瀬さんは、いつも学食で食べてたから、食堂に行かないのはちょっとフシギ……。
 それがなんだか、気になってついていった。
 たどり着いたのは、お昼時にはひとけの少ない、事務室とかが入っている本部棟。

 その場所にいたのは……いつも、永瀬さんがサークル活動をしているところを見ている女のコのひとりだった。

 頭上でひとつにまとめられた髪の毛に、パステル調にまとめられたファッション。
 その子はとってもドキドキしているみたいだった。

 そう。

 その子は、永瀬さんに告白してた。

 永瀬さんは、申し訳なさそうに、でも女のコを傷つけないように微笑んで、断っていたけど……。
 …………なんだか、好きな人が告白されてるのを見ると、胸の奥が切なくて苦しい。
 見ててツライような、だけど、断ってくれて嬉しいような、そんなフクザツなキモチ……。

 話しかけることだってできない私だけど……もし、私も彼に「好きだ」って伝えたら、
 同じように優しくフラレちゃうのかな……。
 でもっ、今の私はこのまんまでジューブン幸せなんだからっ!










 ○月◆日(Mon)

 次の講義が、今いる教室棟とは別の棟だったから、移動するためにキャンパスの中を歩いてたら、
 中庭の芝生でおやすみ中の永瀬さんを発見♪

 なーんてね★

 月曜日はこの時間帯に、永瀬さんがこの場所にいるってこと……実は知ってたんだ♪
 だから、移動するのには遠回りのこのルートを歩いてみたの。
 ……だけど、『永瀬さんに気づかれたら』って考えたら、思わず少し離れた学生ホールの影に隠れちゃった××

 私の手も、キンチョーで震えちゃってた。

 永瀬さんに私のことを知ってもらいたい、って気持ちは、モチロンあるんだけど。
 見てるだけでも、こんなにドキドキして、こんなに震えちゃうのに。
 これ以上近づいたら、私――どうにかなっちゃうよ……

 永瀬さんは、芝生の上に腰掛けて、ゆっくりと人の流れを眺めてた。

 あれ――……

 そのときのことを思い出したけど……違う。

 “ゆっくりと”、じゃない。

 “じっくりと”、“注意深く”……。

 永瀬さんの瞳は、いつもの穏やかで、優しそうなそれとは違って。
 鋭くて、少し怖くて、でも――なんだか寂しそうだった。
 どうしてそう感じるんだろう?
 永瀬さんはいつもたくさんの人に囲まれてて、楽しそうなのに。

 ちょっと気になる、な。



 
○月▽日(Wed)

 込み合う車内。
 先週の水曜日とおんなじ時間に、私は電車に乗った。
 

 『ちーづるっ。今日も、一緒の電車だね』

 『あっ……永瀬さん! うん、ちょっと遅れそうだったケド……
 な、永瀬さんと一緒に……行きたかったから』


 真っ赤になっちゃう私に、永瀬さんは優しく笑う。


 『ホント、千鶴は可愛いな』

 『えっ……?』


 私の胸はもうこれ以上ないくらいに、高鳴った。
 永瀬さんは、ぐるりと電車のなかを見渡す。

 『この車内にも、千鶴以上に可愛い女の子はいないよ』

 『そんな……! そんなことないですー!!』

 体全体を使って、全力で否定する。
 そんな私を、永瀬さんがじっと見つめるから、思わず顔を背けちゃった!
 
 それから大学の最寄りの駅に着くまで、私の胸は、ずっとドキドキ鳴りっぱなし!
 永瀬さんと私との距離が、離れてたせいかなぁ?
 電車を降りたら、永瀬さんの姿はあっという間に見えなくなっちゃった……。
 ガッカリ……。



 でも、私と永瀬さんがハートとハートでお話したことは、
 ずっと私の胸の中にしまっておくからね、永瀬さん♪♪



 ○月◇日(Fri)

 大学からの帰り道、ちょっと前のほうを永瀬さんが歩いてた!
 最近、永瀬さんに会う機会が多くて嬉しいなぁ♪

 “これって、永瀬さんのおうちを知るチャンスかも?!” って思ったら、
 なんだか気になって、後を追ってみることにしました。
 だって、す……好きな人のおうちって、とっても気になるじゃない?

 この前も思ったけど、永瀬さんって歩いているときでも、全然スキがないカンジ☆
 周りを、自然を装いながら伺っているというか……。
 見つかっちゃったりしたら、恥ずかしいから、できる限り距離を置いてるけど……、
 いっぱい角を曲がってはぐれそうだった××

 そして。

 着いたのは、海の近くのコンビニ。
 その建物の後ろ……裏口かな……に永瀬さんは入っていったみたい。
 ここが……永瀬さんのおうち…………なのかな。
 でも、見たところお店しかなさそうだし……。

 私は、駐車場に止まっている車の陰から、お店の中をしばらく見てた。
 うぅ〜……、はたから見たら、ゼッタイ怪しいヒトに思われてるんだろうなぁ〜〜××
 そう思った、瞬間。

 店員の制服に身を包んだ、永瀬さんがレジのほうに歩いてきたの!!
 お客さんたちに向ける、大学で、お友達さんに見せているのとはちょっと違う、笑顔。

 アルバイト……してるのかな?
 お仕事中の永瀬さんも、とっても素敵で、テニスのときよりも増して、爽やかで。

 永瀬さんの別の一面が見れたようで、なんだか嬉しかった♪



 おうちがどこなのか、わからなかったのはザンネンだったけどね。










 □月×日(Mon)

 永瀬さんと、女のコが話をしてた。
 ……遠くから見てたから、会話の内容までは聞き取れなかったけど……。
 …………なんだかイイカンジ……だった。

 明るそうで、元気で、友達もたくさんいそうなタイプの女のコ。
 ……永瀬さんも、ああいう子が好きなの……かな。

 ……私じゃないの?

 私じゃダメ、なのかなぁ?

 彼の優しげな表情と、女の子の嬉しそうな顔が、頭の中をぐるぐるまわってる。

 私も、永瀬さんと――……

 もっともっと、永瀬さんのそばに



 いたいよ。

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